専門家は技術的知識があれば問題ない?メジャーな専門性とマイナーな専門性について

人事領域で働く時間も十数年と長くなり、最近はお客さんから「専門家ですね!」と言われることも少しずつ多くなっている気がします。

ただ、個人的には専門家として確立した!なんて思いは微塵もなくて、今でも昔のまま、素人なりに「あーでもない、こーでもない」と試行錯誤しながら物事を考えていると感じています。

確かに、お客さんと話をしていて「その場合はこうだろうな。。」みたいな直感が働く場合もあるのですが、それは100%正解としてそう思っているわけではなくて、それをベースに細かい箇所はそのときのケースに合わせて調整していくイメージで物事を考えたりしています。

この違和感に対して「メジャーな専門性」「マイナーな専門性」という言葉がピッタリと当てはまったので、今回はそれらについてまとめてみたいと思います。

元ネタはこちら。P31ページ付近です。

メジャーな専門性とは

さて、それではメジャーな専門性とはいったいどういう専門性を言っているのでしょうか。

先の本では、メジャーな専門性を医者や法律家の専門性と表現していて、いわゆる技術的知識を持っていることが専門家としての力量の向上につながるようなものだと説明しています。

本では言及されていませんが、電気工事やエンジニアなんかもメジャーな専門性にはいるでしょう。これまで積み上げてきた技術があり、しっかりとその基本に則って作業をすればシステムが問題なく動くというのがメジャーな専門性です。

一般的にいう「専門性」とは、ここでいうメジャーな専門性を指していることが多いと思います。

ただ、このような文脈で「あなたは専門家ですね!」と言われると違和感を感じてしまうのですが、それは僕らの人事領域の仕事は実は「マイナーな専門性」に属しているからなのでしょう。

マイナーな専門性とは

ではマイナーな専門性ですが、こちらは教育や福祉などの専門性が該当するようです。

マイナーな専門性では、目的やゴールが曖昧なことも多く、常に複雑性、不確実性、価値葛藤などに直面していて、医者や法律家のように技術的知識に頼ることが許されないと説明されています。

つまり、マイナーな専門性は、典型的な教育プログラムや資格を通じて得られる技術的な専門性ではなくて、実践や経験を通じて身につける必要がある専門性を指すわけなのですね。(ショーン

例えば、人事領域、マーケティング、コンサルティングの仕事などはこれにあるでしょう。これらの分野では、理論的な知識も重要ですが、それだけでは十分ではなく、実際の業務を通じて得られる洞察や経験がより重要になります。

また、マイナーな専門性には、創造性や革新性が求められることも多く、新しい状況や問題に対して柔軟に対応する能力が必要です。これは、既存の枠組みや定石に囚われず、オリジナルのアプローチを見つけ出す能力を意味します。現場は毎回違うわけであって、その現場に応じて生み出す解も全く違うものになるのです。

さらに、マイナーな専門性では、人間関係やコミュニケーション能力も大きな役割を果たします。チームでの作業やクライアントとの関係構築など、人と人との関わり合いの中で成功を収めるためには、これらのスキルが不可欠なんですよね。

メジャーな専門性がこれらのスキルを必要としないこともないのですが、おそらくマイナーな専門性の方がこれらのスキルの重要度は高いと思われます。

これらをまとめてみると、こんな感じですね。

違和感の正体

以上、ちょっと長くなりましたが、これで冒頭の話題である「専門家ですね!」に対する違和感の正体がわかります。

僕は「専門家ですね!」の言葉に対して「(メジャーな)専門家ですね!」という意味で受け取ってしまっていたということなんですね。

自分的には技術的な正解があるわけではなく、試行錯誤しながら考えている(マイナーな専門性を発揮している)状況なのですが、そこに「(正解たる技術と知識をもっているメジャーな)専門家ですね!」と言われたような感覚になって「なんかチグハグする?」と違和感を感じていたわけです。

僕がメジャーな専門性をメインとする職業についていたのならば、おそらく違和感は感じなかったのかもしれませんね。

組織開発でもリーダーシップでも、人事領域の方と話していると「いつまでも正解が見えないね」という言葉がでることがよくありますが、これは専門性の観点からみるとある意味当然です。

人事領域はマイナーな専門性の領域であって、常に複雑、不確実、価値葛藤と隣り合わせの領域です。どれが正解というのはなくて、逆に言えばどれも正解になりうる世界なのです。

だからこそ、僕ら人事領域を専門とする職業はリフレクションが重要であり、反省的実践家として常に考え続けることが必要不可欠なのでしょう。日々リフレクションですね。