発達心理学者のエリクソンは、リフレクションによる気づきを促進させるために「よく考えられた実践」という考え方を提唱しています。
よく考えられた実践とは、その言葉通り「ただ行動をするだけじゃなくて、ちゃんと考えて行動するんだ。すると、よい気づきが出てくるよ」ということです。
エリクソンはよく考えられた実践のポイントとして次の3つを挙げています。
- 課題が明確で、適度に難しいこと
- 実行した結果にフィードバックがあること
- 誤りを修正し何度も実践を繰り返せること
言われてみれば真っ当なことですね。
簡単に説明してみましょう。
1)課題が明確で、適度に難しいこと
実践する課題は、ちょっとだけレベル高いものであることが重要です。
緊張感もあるけど、やって出来ないことはない。
そういうレベル感の実践をこなすことで、人は成長することができます。
仕事でよく「人を成長させるのは修羅場だー!」とかの声も聞きますが、それと基本的には同じことだと思います。
※ただ、修羅場すぎる経験は成長を阻害しますので、適切なレベルの実践を提供することが大切です。
2)実行した結果にフィードバックがあること
結果にフィードバックがあることも大切です。
例えば学校のテストを思い出してください。テストを受けても、点数が戻ってこなかったらどうでしょうか。
毎回テストを受けるだけで、その結果がどうなっているのかわからない。それだとやる気は続きませんよね。
実行した結果にはちゃんとフィードバックがあること、これは実践を設計する上で大切です。
部下の実践を支援するときには、上司の方はぜひフィードバックしてあげてほしいですし、自分で何かしらの実践をするときも、周りの人に感想を聞くなどの何かしらのフィードバックを意識することが大切です。
意外に忘れ去られているポイントですので、フィードバックはぜひ意識的に収集してみてください。
3)誤りを修正し何度も実践を繰り返せること
で、最後に大切なものは修正して再挑戦するということです。
テストも自分が出来なかった部分がわかったら、そこを勉強し直しすことが大切。
で、その結果、次のテストで良い点数をとれた!という経験があると、人はやる気を出していくわけです。
学校のテストだけではなく、仕事でも修正→実践→また修正のサイクルは非常に大切です。仕事の成果ってそのサイクルの中でにじみ出てくるものだと思います。
仕事は失敗してはいけないもの!という認識も多いとは思いますが、ぜひ「失敗を前提にした実践(学習)」というのも仕事の中に設計してみると、成長の幅が拡がると思います。
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以上、エリクソンのよく考えられた実践について、簡単に紹介してみました。
ただ実践するだけではなくて、このようにポイントを押さえた実践をすることで、私たちの経験はその質を高めることができそうです。
もちろん、実践をしたあとはリフレクションすることが大切です。
リフレクションという考えを提唱したデューイも、実践だけに偏った学習を「這い回る経験主義」という言葉で批判したりしています。
ちゃんと「よく考えられた実践」と「リフレクション」を行っているか、今一度自分の学習スタイルを振り返ってみるとよいかもしれません。