手法の組み合わせに挑戦する:LSPコラボレーションワークショップ2020

先日、定期的に開催しているLSPとのコラボワークショップを行いました。
 
今回はWithコロナの状況での開催となりましたが、除菌グッズの利用や会場の風通りなどできる限りの対策をして少人数で実施しました。
 
今回もワークショップを通して見えてきたこと、気づいたことなどを織り交ぜながら簡単にレポートしてみようと思います。
 
ご興味のある方は、前回や前々回の記事もご覧ください。
 
 
 
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さて、今回のコラボワークショップは「人間関係」をテーマに行いました。
 
人間関係は誰もが関係あるテーマであり、withコロナで生活が変わる中、今でこそ考えてみたいテーマです。
 
コラボレーションワークショップでは、対話に様々な工夫で高解像度の対話ができるように設計していますが、今回はいつものLSPとリフレクションカードの手法だけではなく、哲学対話の手法も取り込んで実施しました。
 
哲学対話の詳細はググったらたくさん出てきますが、LSPやリフレクションカードを使って対話する前に、全員で「人間関係」についてフリーで対話する、というステップを追加しました。
 
哲学対話を追加することで、全体の対話にどんな影響が生じたのでしょうか。
 
それぞれのステップについて簡単にまとめていきます。
 
 

ステップ1:哲学対話

 
「人間関係について自由に話してください」
 
哲学対話はこんな問いから始まりました。
 
参加の皆様は円座になり、一人ひとり感じたことを話していきます。
 
 
 
 
25分の哲学対話の時間で様々な内容が話されましたが、人間関係について話が進化していった!というよりは、それぞれが思っているトピックがたち現れるように話が進みました。
 
参加者の考えが繋がっていくというよりは、参加者の考えを表す島が出現する感じです。
 
 
自分の知っている島もあれば「そんな視点考えたことなかった!」という自分が全く知らない島もあります。
 
参加者それぞれが「あの島、深めたら面白そうだな、、」と感じ始めたとき、時間がきて哲学対話の時間は終了となりました。
 
以下、哲学対話後に参加者が話していた感想です。
 
  • 他の人が考えている「人間関係」について興味が湧いてきた。それぞれのトピックを深堀りたい。
  • 仕事での会話は、どうしても具体的になっていくので、抽象的なレベルを維持するこの話は、改めて楽しいし、好きだと思った。
 
2つしか聞き取れなかったですが、最初の段階では「人間関係とは?」と言われてもまっさらな海で「??」と思ってたものが、哲学対話のステップを通すことで島が現れてどこを探検したいのか、これからの対話の準備ができていることがわかります。
 
哲学対話は、LSPとリフレクションカードに繋がる人間関係に対する認識の拡大を狙って取り入れたので、無事狙い通りに対話をすすめることができました。このままずっと哲学対話を続けてももちろん深い話ができそうですが、ステップはLPSに移ります。
 

ステップ2:LSP

 
次は皆さんお待ちかねのLSPです。
 
LSPセッションでは自分と、自分を取り巻く人間関係について、モデルをつくりました。こんな感じでモデルを作って、そのモデルを媒介にしながら対話が進んでいきます。
 
 
LSPでいつも面白いなと思う部分は、自分が作ったモデルを他人が説明するというステップです。
 
普通は自分で作ったモデルは自分で説明すると思うじゃないですか、でも実際は自分が作ったモデルを「他人が説明する」ということをやります。
 
全く関係ない人が初見インスピレーションで説明するので、そんな見方もあるのか(笑)みたいな意見がたくさん出てきます。そうやって、認知の固定化をどんどんほぐしていくのは、LSPの得意技だなと思います。
 
また、実物としてモデルを指差しながら対話ができるのもLSPの強みです。他者から自分のモデルについて「ここの特徴的な形はどういう意味があるの?」という質問があったら「それは多分、XXという意味です。XXだから、○が□なんです。」と即興で主人公が質問に即興で答えます。ここがLSPのポイントなんですが、即興で答えるものだから右脳的な直感回答が出てくるんですよね。回答は普段から考えて自分にとって当たり前のこともありますが、逆に意識に上ってこないけど「言われてみれば、自分、そう考えてるわ。。」みたいなことも出てきます。少し話は飛びますが、イノベーションって、後で考えてみると当たり前のことだったってよくあることです。深い洞察も「なんで今までそれに気づかなかったんだろう??」ということが実は大切だったりして、そういうインサイトが出てくるのが右脳的な直感即興回答じゃないかと思っています。(つまり、LSPは自分内におけるイノベーションにアプローチしているのかもしれません)
 
そんなこんなで、LSPセッションでは「人間関係」について、「自分」「その周りにあるステークホルダー」「目指したい未来」等についてモデル作成、対話を深めていったのでした。
 
この時点でグループには不思議な連帯感ができています。哲学対話で人間関係に関する全体感ができて、LSPセッションで参加者一人一人の人間関係が可視化されてきました。
 
ワークはリフレクションカードへ移ります。
 

ステップ3:リフレクションカードセッション

 
リフレクションカードは、LSPに比べて左脳的なステップです。
 
問いと言葉を媒介にしながら、これまで話してきた「人間関係」について対話を続けていきます。
 
 
今回のコラボワークショップでは、人間関係について思索するだけではなく、自分の理想とする状態に近づくためどんな行動をするのか?までを対話を進めたいと考えていました。
 
リフレクションカードの役割は、LSPで可視化した「周囲のステークホルダーも含めた、人間関係における自分の理想状態」を俯瞰的に眺め、歩みを進めていくための対話をすることです。
 
リフレクションカードのテーマ選びって結構大切なのですが、今回のテーマは「ジレンマに感じていること」「チャレンジできていないこと」をベースにしました。このようなテーマを使うことで、歩みを進めるため何をすればいいのか?というベクトルを対話に入れることができます。
 
ということで、リフレクションカードセッションです。LSPと同じように主人公を決めて、その主人公に対してカードを使いながら問いを投げかけていきます。
 
 
セッション写真を取り忘れてしまったんですが、上のようなモデルに対して、それぞれがどう関わっているのか?壁に感じているところはどこなのか?なぜ、それが壁になりうるのか?因果関係は本当にそれでいいのか?等、様々な問いが参加者の間で飛び交っていました。
 
ちなみにリフレクションカードでは、今回マジックワードを設定しています。「実は…」という言葉をマジックワードに設定して「マジックワードを対話のどこかで使うように意識して進めてください」という目標を設定しました。マジックワードを意識することで、自分の中の深層部分へのアクセス性を高めることが狙いです。
 
やってみると「実は…」という言葉が各グループでチラホラでてきまして、それぞれの自己開示が「発見ゲーム」のように進んだのが印象的でした。これは対話のゲーミフィケーションだと思ってて、このように簡単なゴールを対話の中に設計すると参加者はゲーム感覚で楽しく対話ができると思っています。対話のゲーミフィケーションは他にもネタがあるので引き続き探求していく所存です。
 

ステップ4:円座に戻る(哲学対話)

 
リフレクションカードが終わったら、最後はまた円座になって哲学対話です。さっきと同じ写真ですが、またこんな感じで円形になって、LSPとリフレクションカードでの対話体験を経た上で思っていることを話します。
 
 
 
最初はLSPとやリフレクションカードをやってみての感想が多かったですが、時間が進むにつれて話は深まっていきます。
 
「人間関係」というテーマで各自が思ってること、考えてることを共有してきたわけですが、やはりお互い考えていることは全く違うと。自分の興味がある領域には他人は全く興味がなかったりするし、その逆もしかりであると、そういう感想がでてきました。
 
これらはよく出てくる感想ではありますが、今回はそれらの感想に熱がこもっていました。表面的に「違うよねー」って言っているのではなく、様々な角度からストーリーを含めて対話した結果「やはり違いますな。。。」という実感が籠もっている感じです。
 
参加者から「合意形成はその内容よりも、一緒に時間を掛けて議論、合意したっていう事実が大切だよね」という言葉があったのですが、今回もまさにそんな感じで実感が作られたようでした。こういう「強い実感」というものはワークが終わってからも中に残りますし、ここまでの実感を作ってこそワークショップを「楽しかった!」だけに終わらせず、日常に繋げていくことが可能になると思います。
 
最後に参加者からの感想です。以下、いくつか抜粋。
 
  • それぞれのパートが有機的に繋がり、全体として深く「考えた=哲学した」という実感があった
  • 哲学対話で「人間関係」をどのように見るかという「観点」がいろいろ出されたことが、その後の内省を促したように思えました。
  • 非常に新しい経験でした。誰もが構えず楽に話せるので、この手法は社内でも使ってみたいと思いました。
  • 半日という短い時間で3つの体験ができる点が良かった。他の方の作品が自分では発想もしない内容で面白かった。
 
以上、LSPコラボレーションワークショップの所感でした。
 
今回の実施を受けて、もっと長い時間対話をしてみたい!という空気が盛り上がっております。状況が落ち着いてからにはなりますが、今度は泊りがけでやってみるワークショップなんかも企画したいなーと思った次第です。