実践家の情報共有は最高の勉強になる:リフレクション実践研究会Vol.2

先日第2回リフレクション実践研究会を開催しました。

リフレクション実践研究会は、2016年3月から開催している実践家のための研究会です。

企業内でリフレクションに関連する活動を行っている実践者たちが集まり、それぞれの活動を発表しディスカッションします。

今回は(株)富士通ミッションクリティカルシステムズ(以下FMCSと略)の小針さんをゲストにお迎えして、新人研修で行ったリフレクションの実践について情報共有をしてもらいました。

もうね、めっちゃ凄かったんですよ、いろいろ。

他の参加者も口々に言ってたんですけど『これだけ構造化されて、しっかりと実践しているところは中々ない』ですね。

発表でわかるだけでもスゴイので、わからない裏の部分ではもっと綿密な計画があったのでしょう。。。いいなぁ、僕もこんな新人研修を受けたかった(笑)

さて。今回の実践研究会のポイントは次の通り。

  • 新人研修に経験学習やリフレクションをどう組み込んだのか?
  • リフレクションカードがどう使われて、どんな成果を出したのか?
  • 導入するときどの様な経緯やステップを辿ったのか?
  • やってみて見えてきたことは何か?

それでは濃密な2時間のイベント、レポート開始してきましょう!

今日の期待は何?

イベントは参加者の自己紹介と本日期待することの共有から始まりました。

それぞれが付箋に本日期待することを書き出していきます。

IMG_5998

書きだした付箋をこんな模造紙に貼り付けます。オリジナルのキャラクターが書いてあったりして、この辺からもう素敵(笑)

IMG_6012

付箋を貼りだしてみると、参加者の間にはリフレクションを企業で実践している(したい)方という共通の軸はあるのですが、一人ひとり異なる期待を持って参加していることがわかります。

一番多いのは、やはり具体的な実践方法でしょうか。そうですよね、それがわからないから担当者は困っているんですよね。

そんなこんなで、全員の紹介と何を得たいと思っているかを共有したら、いよいよ小針さんの発表が開始です。

始まりは経験学習から

IMG_6002m

発表は小針さんがリフレクションを実践するに至った源流の話から始まりました。

詳細のスライドなどは都合でお見せできないのですが、元々は経験学習に出会ったことがキッカケとのこと。

「なんだか良さそうだぞ?」と経験学習を本気で調べているうち、ナカシマのブログに行きあたって、いろいろ話をしたり情報交換をしているうちに、リフレクションカードを宣伝されて(笑)「これ面白そうだな!」と使ってみようということになったらしいです。

小針さんは話を進めるにあたってリフレクションカードのいいね!ポイントを上げてくれます。

自分では思いつかない質問がある
・質問が網羅的にカテゴライズされている
・みんなで出来る

いやー、こうやって思ってもらえるなんて開発者冥利につきますよね。最初は一般販売まで1年かかって作りこんだのですが、途中で諦めずに開発を進めてよかったです。

新しい取り組み、その最初のキッカケは

ここからは実際に会社でカードを使ってたことに対して、発表と質問を織り交ぜながら行いました。

まず、話題に上がったのは「リフレクションのような新しい取り組みって、どうやって社内で納得してもらったの?まずやる事が難しくない?」ということ。

リフレクションって、そもそも言葉自体がまだメジャーでありません。

カードを見てなんとなく「あ、皆で対話するのね」までは行くんですけど、「それやって何あるの?みんな忙しいんだから普通に仕事したほうがいいでしょ?」となるんですよ。

ただ、小針さんは違いました。

いきなり新しいことをやろうとしても難しいのは当然なのですでに似たような取り組みをしているところで実験的に使ってもらうことから始めたんですね。

ということで、まず使ってみたのが社内で既に行われていた対話の場。

そこは時短勤務女性とその上司がお互いの想いを共有する場で、そこでリフレクションカードを実際に使ってみたとのことでした。

そして結果は素晴らしい結果に(嬉しい!!!)

当日小針さんが会場のドアを開けると明らかにいつもと空気が違っていると感じたそうです。

「会場にはあたたかい空気が流れていました。いつもの研修とは全然違ったので、今でもその感覚は覚えています」

小針さんはそう言ってくれました。(もう本当に嬉しい!!)

で、ここからがポイントなのですが、リフレクションという新しい取り組みを広げるにあたり大事な部分は、当日参加していた上司の方が「このカードはいい!」と言ってくれた部分なんですね。

そこで上司が実際に体験してみて、その効果を実感してくれたこと、そして良い評判を流してくれたことが今後の展開に向けて良いスタートになったとのことでした。

あと、女性から始めたところが良かったかなーとも。女性は話をすることに慣れている方も多いので、あのあたたかい雰囲気を最初に出せたのが一番良かったのかもとのことでした。

新人研修で実践してみて

で、良いスタートを切ることのできたリフレクションカードの取り組みですが、次は新人研修で使ってみたとのことです。

FMCSさんでは、新人研修において経験学習を重要視しています。

詳しくはこちらの記事などを呼んでもらえるとですが(外部サイトにリンクします)、経験学習はこれから絶対にキーワードになる考え方ですね。人の成長の7割は経験から得られるとの研究結果もあるくらい。

そんな経験学習を計画的に実践している小針さん達はやはり只者ではないと思いながらでしたが、これがまた綺麗に構造化して実践していました。

こちらも詳細は書けずに申し訳ないのですが、ポイントは次の点でしょう。

  1. 毎日リフレクションシートを書いていた
  2. 週報でそれをまとめていた
  3. 最後に全体のリフレクションをしていた

経験学習って、経験をまず見える化することが大事です。

文章でも、写真でも、それこそ最近は動画で見える化するものもありますが、何かしらの振り返りのモトを用意することは重要です。(ちなみに、僕はその見える化したモノをダイアログオブジェクトと名付けています)

今回は日々の経験をリフレクションシートというワークシートで見える化するような工夫をしていて、経験学習を支援する仕組みは流石だと思いました。

ちなみに、リフレクションシートの中身は経験学習サイクルにしたがったもので、

  • 経験したこと
  • 気づいたこと
  • なぜそうなったのか
  • 次にどう活かすか

という内容。

このリフレクションシートを毎日書くことで、新人メンバーは経験を認知し、整理していく。

週報ではそれをもう少し記述的にまとめるし、研修の最後には全体のリフレクションでそのシートを使ってグループ分けするなどの工夫をしていたそうです。いやー、これはスゴイですね。だって、日々積み重ねてきたデータ(リフレクションシート)を元にダイアログを構成しているわけですよ、適当にグループ分けして、適当に話してるのとはわけが違います。これは秀逸。

ちなみに、リフレクションカードは最後のまとめのリフレクションの時に実施したそうです。

  • 振り返りの価値はこうなんだな、というのを自分なりに言っている新人が増えた。
  • 「経験から学ぶのは難しい」と言ってた新人が「同期と仲良くなれた、経験から学べた、成長を感じた」と言うようになった。
  • 技術要素にも影響がある?難しい試験に合格する人が出てきたり、昨年比である試験の合格者が4倍になったり!(経験学習が影響している!?)

などの効果があったそうです。

OJTや新人研修のスタッフの間でもカードを使ってくれたようで、カードをかなり活用して頂いているようで嬉しい限りです。

みんなと話そうトーク

さて、そんな小針さんの実践報告が終わった次は、参加者全体で深めるトークを行いました。

ここも話すと長いのですが、とりあえず感想を書くと楽しかった(笑)その楽しさはホワイトボードを見てもらうと一目瞭然ですね!

IMG_6009

参加者の方には、同じように人事の方から、病院でお勤めの看護師の方、はたまた小学校の先生までの多様な人材がそろっていたのですが、それぞれの視点から考えを深めた時間は非常に興味深いものでした。

皆でコレでもかと質問とディスカッションを繰り広げたのは1時間。そのエッセンスを無理やり一言にまとめるとしたなら「リフレクションを導入して実践するにはストーリーが大事」ということでしょう。

リフレクションは基本的にどの組織でも新しい試みになるわけですが、新しい試みというのは期待と同時に不安もあるわけです。その不安の部分をどうマネジメントしていくのかが実践者が頭をつかうポイントなのですが、1つポイントを上げるなら行動を順番に積み重ねていくという部分かと感じたのです。

まあ、聞いてみれば当たり前のことかもしれないのですが、

  1. まずはランチ会から始めるなど敷居の低い場所から対話を体験してもらったこと
  2. 少しずつ土台が出来てきたら、メンターやロールモデルとなる人から話を聞く機会を作ったこと
  3. その後自分たちでも対話する機会をつくったこと

など、敷居の小さいものから少しずつステップアップしていったところが印象的でした。

企業で、病院で、小学校での実践に参考になることも多かったようで、ぜひそれぞれの現場で役立てて頂けたらと思います。

最後のリフレクション

最後は参加者全員でリフレクションを。

結果をどーん。

IMG_6013
  • 職場のどこで活きるかを検討
  • 1年後、2年後の定点観測
  • リフレクションあり地獄を大きくする(笑)

などなど、参加者それぞれで次への一歩を明確にして会は終了しました。

今回の実践研究会では、実際の事例を共有したことで、他の参加者の方に自分が実践する際の確かな手がかりを持って帰ってもらえたかと思います。

今後、自分で実践したことを発表してくれると言ってくれた方も多くて嬉しい限りです。

リフレクション実践研究会は次のサイクルを実践します。

  1. 実践の発表
  2. 多様な視点からの探求
  3. 各自のさらなる実践
  4. 1に戻る

このサイクルを各社で大きくしていけば、きっと対話が拡がります。そして自分事が拡がります。

働くことがもっと楽しくなり、よい世の中がつくられると嬉しいです。

実践を発表して頂いたFMCSの小針さん、そしてグラフィック・ファシリテーションを担当してくれた成田さん、お忙しい中本当にありがとうございました。

次回

次回のリフレクション実践研究会は7月1日(金)の開催予定です。

次回は病院内でのリフレクション実践の取り組みをお伝えいたします。

看護師に、療法士に、医者に、患者に、病院内には様々な視点があふれています。日々何が起きるかわからない職場に置いて、リフレクションはどう実践され、効果を発揮しているのでしょうか。

次回も興味深い実践が共有されると思います。

詳細は本ブログで発表しますので、自社にてリフレクションを実践している方、実践したい方はお気軽にご参加ください。

それでは!リフレクション実践研究会を引き続きどうぞよろしくお願いいたします。