最近、若手社員を見ていると、以前よりも雑用に対する忌避感が高まっているように感じます。昭和や平成の頃は、1年目は「いわゆる雑用をするもの」と言われても、「まあ、そういうものか」と素直に頑張る姿勢があったように思えます。しかし、最近の新入社員は、雑用を素直に頑張れない人も多くなっているようです。いや、正確には表面的には頑張るのだけれども、心の中でスッキリした気持ちで頑張れないと言ったほうがよいかもしれません。
彼らの口からよく聞くのは、「この仕事(雑用)は自分の良いキャリアにつながるのか?」という不安です。今も昔も、誰しもが良いキャリアを築きたいと思うのは当然のことです。しかし、その不安は昔より今のほうが大きくなっているようです。
かつては、一つの会社で長く勤めることが一般的であり、それ自体に多くのメリットがありました。終身雇用や年功序列の制度により、会社で頑張っていれば自然と役職や給料が上がり、将来的な安心が得られると信じられていたのです。そのため、たとえ雑用であっても、目の前の仕事に全力を尽くしていれば、将来は安心だったわけです。
一方で、現代は状況が大きく変わりました。会社は突然倒産したりしますし、終身雇用の保証はもはや当たり前ではなくなっています。さらに、SNSの普及により他人のキャリアの進展や他社の給料・福利厚生が簡単に目に入ることで、他人と自分を比較する状況が生まれています。転職サービスの積極的な宣伝や、転職して成功している(ように見える)友人や他人の姿を見て、自分の現状に不安を感じる若手社員も増えていますよね。
こんな状況の中では、若手社員は、現在取り組んでいる雑用や納得いかない仕事に対して「本当に自分のキャリアに価値があるの?」と疑問を抱き、「このままでいいのか?」と悩んでしまうことは結構合理的なことだと思います。
ただ、本当は雑用に見える仕事にも、業務の基本やチームワーク、コミュニケーションスキルなど、多くの学びが詰まっています。こうした業務をこなすことで得られる経験やスキルは決して少なくありません。上の世代からすると、「その積み重ねこそが将来の成長に繋がるのだ」と考えてしまう部分もあるのですが、それはなかなか伝わりません。
若手の立場からすれば「そんな不明瞭なことに大切な時間を費やすわけにはいかない!」となってしまうわけであって、彼らはより具体的で、直接的にキャリアアップにつながる業務に時間を使いたいと考えているのです。
ギャップを埋めるためには
では、このギャップをどのように埋めていけば良いのでしょうか。企業側としては、まず若手社員に対して業務の意義や将来的なキャリアパスを明確に示し、納得感を持って業務に取り組める環境を整えることが求められます。また、業務の中で成長機会を提供し、フィードバックを積極的に行うことで、彼らの不安を解消することも大切でしょう。具体的には、業務の成果がどのようにキャリアに結びつくのかを示すことで、若手社員にとって目の前の仕事の意味がより伝えてあげるとよいでしょう。定期的な面談を行い、キャリアに関する相談や意見交換を行うことで、彼らのモチベーションを維持し、安心感を提供することも有効です。
一方、若手社員も短期的な視点だけでなく、長期的な成長を見据えて、多様な経験を積むことの重要性を理解することが大切です。雑用と思われる業務でも、自分なりの目標を設定し、積極的に取り組むことで新たな発見やスキルの習得につながるかもしれません。また、雑用の中でも工夫して効率化を図ることで、より高いレベルのスキルを身につけることができる可能性もあります。例えば、単純作業であっても、より効率的な方法を模索したり、新しいツールを活用することで、業務改善に繋がる取り組みができます。こういうことを1on1などでじっくり伝えていくことも、現代の上司や先輩には必要な力なのかもしれません。
お互いの立場や考えを尊重し、オープンなコミュニケーションを図ることで、この課題を乗り越えていきたいものですね。企業(上司)と若手社員の間で率直な対話を重ねることで、双方の期待や不安を共有し、共通の理解を深めることで、組織全体の成長と個人のキャリア形成が両立見えてくるでしょう。言うは易く行うは難しですけどね(^_^;)