これからは「問う力」が大事!
会議や1on1、日常会話の中で、的確な「問い」を立てることは、相手の考えを深く理解し、より良い関係性を築くとき、そして問題解決をするときの非常に強力なスキルです。
しかし、良い「問い」を立てることを難しく感じている人は少なくありません。適切な問いを立てることができず、うまく行かなかった経験をお持ちの方も多いことだと思います。
良い「問い」を発するにはいくつかのステップがあります。「問い」はセンスやひらめきだけで生まれるものではなく、相手の話や目の前の状況から、ある決まったプロセスをたどることで、ある程度質の高い問いを生み出すことができると思っています。
今回は、僕が普段から意識してやっている「問いが生まれるまでの4つのステップ」を図解し、その具体的なステップを解説します。
「問い」が生まれるまでの4つのステップ
下の図は、僕の頭の中で「問い」が生まれるまでの流れを可視化したものです。「状況」の認識から始まり、「解釈」「意図」を経て、最後に「問い」という形で言語化されます。ちなみに「解釈」の補助に「根拠」が、「意図」の背景には「理想状態」があります。
一見複雑に見えるかもしれませんが、一つひとつのステップはそんなに難しくありません。では、具体的な例を交えながら見ていきましょう。

ステップ1: 状況
まずは起きている状況を捉えましょう。始まりは、目の前で起きている「状況」をありのままに捉えることです。
- 相手が話している言葉そのもの
- 声のトーンや表情、しぐさ
- 会議の雰囲気や、その場の空気感
- 提示されているデータや事実
この段階では、自分の意見や感情を挟まず、客観的な事実として何が起きているかを捉えるのがポイントです。
(例) プロジェクトの定例会議で、新しい提案に対して、いつもは積極的に発言するメンバーのAさんが腕を組んで黙っている。
例えばこんな感じですね。まず、状況を捉える、が最初のステップです。
ステップ2: 解釈
次に、捉えた「状況」に対して、「これはどういうことだろう?」と自分なりの「解釈」を加えます。
ここで大切なのは、一つの可能性に固執せず、「もしかしたらこうかもしれない」「いや、こういう可能性もあるな」と多角的に解釈を立てることです。
(例の続き)
- 解釈A: Aさんは、この提案に反対しているのかもしれない。
- 解釈B: 何か懸念点があって、どう伝えようか考えをまとめている最中なのかもしれない。
- 解釈C: 単純に、少し疲れているだけかもしれない。
解釈の仮説を立てたらその中から、どれが最も妥当性が高いかを「根拠」に基づいて判断します。「根拠」とは、その解釈を裏付ける客観的な情報のことです。
例えば、
- もしAさんが以前から「この方向性には絶対反対だ」と話していたのなら、それは解釈Aを支持する根拠になります。
- もし今日の昼食時にAさんが「ここ数日忙しくてあまり寝られていないんだ」と話していたのなら、それは解釈Cを選ぶ根拠になるでしょう。
このように「自分の解釈に根拠はあるか?」とセルフチェックする癖をつけることで、単なる思い込みや決めつけを防ぎ、解釈の精度を格段に高めることができます。
今回は、特に明確な根拠がなかったため、「解釈B(何か懸念があって考えているのかもしれない)」の可能性が一番建設的だと判断したとしましょう。
ステップ3: 意図
根拠をもって解釈の確度を高めたら、次に「では、どうなっていたら良いのか?」という「理想状態」を描き、そこへ向かうための「意図」を定めます。
この「意図」が、問いの方向性を決定づける、いわば羅針盤のような役割を果たします。単に疑問を解消するだけでなく、「この問いによって、この場をどうしたいのか」という目的を明確にするのです。
(例の続き)
- 理想状態: チーム全員が提案内容に納得し、前向きな気持ちで次のアクションに進める状態。
- 意図: (解釈Bに基づき)Aさんが抱えているであろう懸念を引き出し、チーム全体の議論を停滞ではなく前進させたい。
こんな感じですね。ここまで来て「じゃ、どんな問いが適切か?」と考えることになります。
ステップ4: 問い
ようやく最後、具体的な「問い」の形に落とし込むステップです。
ステップ3で定めた「意図」を達成するためには、どんな言葉で尋ねれば良いでしょうか。ここでの問いは、相手を詰問したり、自分の意見に誘導したりするものであってはなりません。相手が話しやすく、思考を促し、対話の扉を開くような問いが理想です。
例えば今回の意図であれば、次のような問いが思いつきそうです。ここでは参考のため「良い問い」と「良くない問い」をあわせて書いてみます。
(例の続き)
- 良くない問い: 「何か問題でもありますか?」「反対なんですか?」
- (相手を追い詰め、防御的な姿勢にさせてしまう可能性がある)
- 良い問い: 「Aさんは、この提案について、どのあたりが気になっていますか?」
- (「懸念があるはずだ」という解釈に基づき、具体的なポイントを聞き出すことで、相手が話しやすくなる)
- さらに良い問い: 「この提案をさらに良くしていくために、何か別の視点や気づいたことはありますか?」
- (「より良くしたい」という共通の意図を示し、相手を「貢献者」として扱うことで、前向きで建設的な意見を引き出しやすくなる)
こんな感じですね。この問いをパッと思いつくには、自分の中に問いのストックをしておくことが大切です。例えば僕であれば、これいいな!と思った問いや、言い回しがあれば、それをストックします。「今度、こういう状況でこういう意図のとき、この表現(問い)を使ってみよう!」と頭の中にタグを打っておくと、上の質問も比較的思いつきやすくなると感じています。
まとめ
ということで、「状況 → 解釈(+根拠) → 意図(+理想状態) → 問い」という問いを発するまでの4ステップについて解説してみました。
- 状況を客観的に観察し、
- 根拠に基づいて多角的に解釈し、
- 理想から意図を定め、
- 意図を実現する問いを投げかける。
このフレームワークは、会議や商談といったビジネスシーンだけでなく、家族や友人との対話、あるいは自分自身のキャリアや人生について考える様々な場面で活用できると思います。皆様の問いの発し方に、ぜひ活用してみてください。