定期的に開催している、レゴ®シリアスプレイ®の技法と教材を活用したワークショップ(以下LSP)とのコラボレーション講座(以下、公開講座)を開催しました。
今回も非常に楽しい公開講座はとなりましたので、以下にレポートしてみようと思います。
少々長い記事ですが、1日の公開講座の流れを一気に体験することができますので、ぜひお読みいただけると嬉しいです。
今回はどんな公開講座?
今回は札幌にて開催、合計12名の参加者様となりました。(札幌では初開催!)
テーマは「ワクワクする職場をつくるには?」です。
昨今は働き方改革の流れもあり、職場を活性化させること、働いていて楽しい!と思える環境をつくることには一定のニーズがあるように思えます。
今回もテーマに惹かれて参加された方は結構いらっしゃったようで、職場をワクワクさせるために奮闘している皆様が多いことがわかります。
また、公開講座ではプログラムの作り方、考え方も持って帰ってもらいたいと考えていまして、
・2つのメソッド(LSPとリフレクションカード®)の組み合わせ
だけではなく、
・プログラムの何が、場をどう深めるのか?
などの企画の設計部分に関するヒントも持って帰ってもらえるように、プログラムを設計して、皆様をお迎えいたしました。
当日のプログラムは次のとおりです。

ということで、最初のLSPパートからいって見ましょう!
LSPパート
LSPは蓮沼さんがファシリテートします。
LSPは、レゴブロックで作った自分の作品を通して、自分の考えや思いを対話する手法です。
不思議なことに、作品を通して対話すると、自分の中の想いが面白いようにスルっとでてきたりします。普通、対話といえば言葉だけでやり取りするイメージですが、LSPのようにモノを媒介しながら話をすることで、対話が促進されたりするのですね。
LSPは言葉だけで対話をすることが苦手な方にも効果を発揮する、とてもオススメな方法だと思います。
スキルビルディング
さて、そんなLSPは、まず「スキルビルディング」から始まります。
ブロックを初めて触る方もいらっしゃいますので、まずブロックを触ること、組み立てることなどの基本的スキルを学びます。 今回は、ブロックをつなげてタワーをつくるというワークで、皆さんとても真剣にタワーをつくっております。

タワーをつくったら、それぞれのグループで自分のタワーの自慢をします。自分のタワーの何がすごいのか?をグループで楽しく話し合うことで、グループの雰囲気もよくなり今後の深い話にも耐えられる関係性が育まれます。
スキルビルディングはブロックを扱う練習とともに、グループの関係性づくりもできる考えられたワークです。プログラム設計のポイントとしては、こういうのがとても大切ですね。 短い時間で、1つのワークに複数の意味をもたせることで、短い時間でも効率的に場を進めることができるよう、細かい工夫がされているのです。
ブロックで「鍵」をつくろう
スキルビルディングが終わったら、次のお題です。 ファシリテーターの蓮沼さんから出たお題は、なんと「鍵」をつくるというもの。ブロックを10個選んで、とにかく「鍵」をつくれというのです。

この時点では何の鍵なのかは説明がないので、参加者は「え、なんで?」「鍵?」という顔をしながら手を動かしていますが、実は説明しないことにも意図があります。
というのはここで「◯◯のために鍵をつくりましょう」と説明してしまうと、◯◯が頭にあって、それに向かって鍵をつくってしまうのですね。でも、LSPの面白いところは、それを最初に説明しないというところ。まずはとにかく鍵をつくる。つくった鍵(作品)に対する解釈、対話は、作ったあとに行うというのがポイントなのです。
ちなみに、今回は鍵をつくったあとに次のような言葉がありました。
「あなたの「鍵」はどんなときに使うのでしょうか?自己紹介をしましょう。」
鍵というのは、自分の内面を表すメタファーだったのです。鍵という言葉を使うと、自分の内面のことを話しやすくなりますよね。 自分の内面を話しやすくなるということは、自己紹介がしやすくなるということであり、自己紹介と鍵の相性はバッチリです。
ここで敢えて「鍵」という言葉を選んだ意図が見え隠れします。手前味噌ですが、さすが考えられていますね(笑)
なお、蓮沼さんはワーク中にも各グループを見回ります。

こうやって各グループをサポートすることで、ワークの進行を助けるとともに、ファシリテーターが見てくれている安心感をグループに与えることができます。 プログラム設計そのものではないですが、こういう細かいファシリテーターの振る舞いも、ワークが機能するためには必要なことです。 ここまで考えて振る舞ってこそ、全体が設計されたワークが完成するのだと思います。
ワクワクする職場をつくる
さて、スキルビルディングが終わって、いよいよLSPワークも本番です。
今回の公開講座のテーマである「ワクワクする職場」をつくっていきます。
みなさん、普段想いがあるテーマなのか、ブロックを組み立てる手が止まりません。

ワクワクする職場の作品をつくったら、作品についてグループメンバーと対話をしていきます。何にワクワクするのか?具体的にそれはどういうことなのか?を作品を通して、グループメンバーと深めていきます。

皆さん初対面の方ばかりでしたが、びっくりするほどスムーズに話ができていたようです。ただ、これだけでは、ワクワクに関して何となーく話しただけで終わってしまっています。蓮沼さんは、もっと話を深めるために次のスライドに移りました。

これは話を深めるのにぴったりなスライドですね。
今、なんとなくワクワクしているものの集合は眼の前にあるわけなので、それの特にどこがワクワクするのか、ピックアップすることで話の解像度を上げようというのです。参加者は、それぞれの作品に旗を立てて、ワクワクの核心を見出していました。(少々見えにくいですが、黒い旗が立っていますね)

で、ここからがポイントなのですが、今回は今つくった一人ひとりのワクワクの核心を持ち寄って、共同のワクワクをつくることにチャレンジしました。一人ひとりのワクワクの核心を持ち寄ることで共同のスーパー作品をつくろうというのです。
核心をつなげてもいいし、重ねてもよい。でも、核心を触るときには、本人に確認する。そんなルールを設けながら、参加者は自分の核心部分を皆さんに共有して、共同のワクワクする職場をつくっていきました。

なお、作品をつくる途中、蓮沼さんは「今つくっている作品に忘れているものはない?本当はこれもいれなきゃいけない!というものがあるとしたらどういうものだろう?」と問いかけていました。
これは、一度出来上がった(と思っていた)ものに対して振り返りをいれることで、追加の気づきを引き出す手法です。「忘れているものは何だろうな?」と改めて問い直すことで、自分の普段アクセスしやすい認識の、ちょっと下の部分、でも大切にすべき部分にアクセスすることができます。
実際に参加者からは、次のような意見が上がっていました。
- コレ、追加で欲しいけど入れていい?
- やっぱり◯◯という想いを大切にしたいので、真ん中かな?と思ったけど右側に移動していいですか?
- 何のためにこれをいれるんだったっけ?
こんな感じで、どんどん追加で対話が深まっていきます。この「忘れていることない?」はLSPの様々な場面で使える手法とのことで、参加した方もなるほどー!とメモをとっておりました。
こうやってグループで喧々諤々と話し合うことで、共同のワクワクする職場はその解像度を高めることができたのでした。
LSPセッションでは、このあとワクワクする職場に対して「障害」を考えて終わりです。これまでつくってきたワクワクする職場に対して、それを実現する際に障害になりそうなものを、ブロックとして共同作品に追加して、次のリフレクションカード®セッションへと移りました。
リフレクションカード®セッション
ここからはリフレクションカード®セッションです。
カードセッションはRML(リフレクションメソッドラボラトリー)を一緒にやってくれているピラミッド計画の八住さんがファシリテートします。
■八住さんの詳細はこちらをご確認ください
紹介ページ:https://pyramidkeikaku.com/
特集記事(ダイヤモンド・オンライン)https://diamond.jp/articles/-/327219

リフレクションカード®では、これまで全体の統合モデルとして考えてきたワクワクする職場に対して、「じゃあ、あなたはそのためにどう行動する?」ということをテーマに実施しております。
ワクワクする職場をつくるには、結局最後は個人が行動する必要があるわけなので、その個人としての行動を場に出してみよう!というのがリフレクションカード®セッションの狙いです。「全体でイメージを考える→個人の行動に落とす」という流れですね。

具体的やったことは、先程LSPでつくったモデルに対し、個人のワクワクを掘り下げるという形でカードセッションが行われました。
皆さん、これまでLSPのモデルを媒介にして、それぞれのイメージが共有されているため、すんなりと話が進んでいきます。

普段のLSPでは、モデルに対して質問をして深めていくとき、参加者の質問力や言語化力が問われますが、リフレクションカード®とLSPの相性のよいところは、その質問をカードが代用してくれるということでしょう。
普段から質問に慣れていない人は、LSPのモデルだけだと、何からどう質問していいのかわからなくなって、質問が進まなくなることがあります。ただ、そこにカードがあると、カードから質問を選ぶだけでいいので、質問に慣れてない人でも質問をしやすくなるわけですね。
参加者同士で質問をしてリフレクションを深めることで、ワクワクする職場のために「じゃあ、自分はどうするのか?」ということを考えることができました。
このあとは、見えてきた自分の行動を持ち帰るだけなのですが、今回はワクワクする職場づくりに向けて、もう一つリフレクションカード側で仕掛けをいれてみました。その仕掛けとは、やる気スイッチと、加速スイッチというものを出してみようというものです。
講師の八住さんは、こういう仕掛けをつくることが得意です。研修やワークショップを終えて「楽しかった!」で終わってはもったいない、なんとかして日常に気づきを持って帰ってもらおう!という八住さんの熱意が伝わります。

自分の行動が見えてきたのは良いのですが、ワークショップから帰ってしまうと、その行動をすっかり忘れてしまうというのはよくあることです。今回は、少しでも実現に向けて日常生活に気づきを持って帰ってもらいたいということで、行動をやろう!と思うための自分のモチベーションのスイッチと、今日の気づきを更に深化させるための加速スイッチの2つのスイッチを考えてもらうことにしました。
やる気スイッチは、具体的にはLSPの最初で作った「鍵」を使います。ワークショップの最初の方でやったのでもう忘れかけていますが、実は「鍵」の正体は自分のやる気に関する鍵でした。ここからカードセッションというよりはLSPのセッションに近い感じになりますが、最初に作った鍵をみんなで改めて見直して、「自分のモチベーションの鍵はなんだろうな?」ということを話し合い、一つの言葉にするのがやる気スイッチです。
また、加速スイッチは、リフレクションカード®の問いから選ぶ「問い」のことを指しています。これは、ワークショップを一日やったからといって、すべてが明確にわかるわけがない、という意図から発生しています。1日のワークを通して、多少気づきは出たものの、まだ自分の中でわかりきっていないもの、不明確なものもあるはずです。それは自分にとって大切なものだとは思うのですが、まだ今日一日ではわからない何か大切なものです。それにたどり着くため、日々考え続けるもの、その何かを見つけるためのヒントになる問いを持って帰りましょう、というのが加速スイッチの意図でした。
参加者は自分の加速スイッチとして、カードの中から3枚程度、自分が継続的に深めていきたい問いを選んで、加速スイッチとして持って帰ってもらったのでした。
以上、長くなりましたが、LSP✕リフレクションカード®のコラボレーションワークショップの全貌をご紹介しました。
LSPは右脳を使った対話、リフレクションカード®は左脳を使った対話と表現することがありますが、今回のコラボレーションでは改めて2つの手法の相性の良さを感じることができました。
参加していただいた皆様、ありがとうございました!大阪や福岡でも開催希望の声がありますので、札幌以外でも様々な地方都市で開催したいなぁと思いつつです。
