問うて伝えるということ:問いの持つ情報伝達機能

問い。

問いと言えば、人に質問することですよね。

人になにかを質問することにより、その人が持っている「情報を引き出す」「考えていることを聞く」。

問いってのにはそういうイメージがあります。

でも、問いにはもうひとつ機能があります。

それは質問者が思っていることを「伝える」という情報伝達の機能。

ちょっと意外に感じるかもしれませんが、「引き出す」のではなく「伝える」というのも問いの一つの役割なのです。

情報を引き出す問い、伝える問い

例えば「今日の夜ご飯は何食べる?」という問いがあったとします。

一般的にこういう問いは情報を引き出すタイプであることが多いでしょう。単純に、相手が夜ご飯についてどう考えているのか、その情報を引き出そうという問いです。

答えとしては「しいたけ食べようぜ!」とか「チーズのせよう!」など問われた人の「情報が引き出される」ものになるでしょう。

一方、「本当にそう思うの?」という問いはどうでしょうか。

使われる状況によっていろんな意味が発生すると思いますが、これって単純にどう考えているか聞くという問いではないですよね。

例えば質問者が「いや、それ違うんじゃない?」と感じていて、「それって、こうだよね?」というなんらかの情報を(無意識にでも)持っている場合、そしてそれを伝えたい場合にこのような問いが使われます。「そう考えなくてもいいよ、こう考えたらどう?」と「伝える」ことがこの問いにより行われているのです。

問われた方は「あれ、本当にそうだっけ?」と考えます。「はい、そう思います」「いいえ、そう思いません」という判断そのものではなく、自分の考えの背景にあるものを探ります。そして(上手くいったら)気づくのです。「あ、そう思い込んでたけど、実はこう思ってるんだわ」ということに。

少しだけ思いを巡らせてみると、皆様もこのような経験はあるのではないでしょうか。

誰かと相談していたとき、相手から「本当にそう思うの?」とか、何かしらの問いを投げられてハッと気づいた経験。

そのときの問いは、情報を引き出すというよりは、相手から「そう考えなくてもいいのでは?こういう考えもあるよ!」という情報(知識や意見)を伝えてもらっていたのでしょう。

問うて伝える、ということ

で、今回のブログのタイトルにつながるのですが、問いのこの機能を使えば「問うて伝える」ということができるわけです。

一般的に「伝える」ということは、何かしらの情報をこちらから伝えることです。

その場合「○○は△△だから、□□なんだよ」という伝え方をすることが多いと思います。これは「教えて伝える」と分類することができそうです。

でも、こういう伝えるということが適切な場面もあれば、不適切な場面もあります。

例えば、相手に自分の頭で考えて欲しい場面。

そういう場面で先のような情報の「教えて伝える」をやったら、相手は自分の頭で考えず情報をそのまま受け取ってしまいます。

自分の頭で考えてたどり着いて欲しい。

そんなときには「問うて伝える」が役に立ちます。例えば「XXが○○するには何が必要だろう?」と問うのです。

このとき、問う方にはある程度、答え(伝えたい情報)のアタリがあります。

で、そのアタリに相手が自ら到達して欲しいわけですが、そこに飛び石で繋がるような問いが、問うて伝えるための良い問いだと考えてます。

ただ情報を伝えるだけではなく、ただ問いを投げればいいだけでもない。ある程度のアタリをつけて、到達するまでの飛び石を問いで伝えるのです。

問いで誘導してもいいのか

コーチング的視点に立てば問いに意図を含めていいの?という疑問も湧きそうなのですが、僕はここでは問いに意図を込めるのもアリだと考えています。

というのは、「伝える」問いはある意味「教える」問いだからです。答えにつながるようにある意味誘導するので「教える問い」なのであって、そこには知恵を伝えるという意図が含まれています。

もちろん常に「伝える問い」だけだと飽きてきますし、何と言っても感じ悪いですが、「引き出す問い」と「伝える問い」を切り替えて使うことができるようになると、リーダーの皆様なんかは嬉しいことになると思います。

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ということで、今回は問いのもつ2つの機能「引き出す」と「伝える」でした。

なお「伝える問い」は、自分でひたすら考えると上手になると思ってます。自分の中で、あーでもない、こーでもない、と考えに考えていると、ふとブレイクスルーが起きることがあります。そのポイントを体験していると、他の人にそのポイントに到達する飛び石が渡しやすくなる、そんなプロセスがある気がしますね。