成人発達の4段階の話:部下のリフレクション支援をどう設計するのか

最近、僕の界隈である本が話題です。

なぜ、部下とうまくいかないのか

これ、界隈では有名な下記の「なぜ人と組織は変われないのか」からのスピンアウトみたいな本で、なぜ人と組織は変われないのかで触れられている「成人発達理論」について、実践の側面から情報がまとまっています。

成人発達理論といったら、「難しそう?」「発達って何?」という反応がありそうですが、そんなに難しくはないです。

例えば、発達という言葉がまず難しいと思いますが、それは一般的な言葉で「成長」と置き換えることができると考えます。

つまり、言い換えるなら、成人発達理論というのは、大人の成長ってどうなってんの?ということを探求しているところであって、その探求の結果を本にまとめましたよ!ってのがこの本なわけです。

そして、それをさらに日常文脈で説明すべく「部下とのつきあい方」というテーマについて絞ってみましたよ!というのがこの本のやっていること何だと思います。

これ、実はリフレクション(振り返り)にとって凄く重要なエッセンスが含まれています。

ということで、今回は「なぜ部下とうまくいかないのか」を参考に、成人発達理論のエッセンスをリフレクションと絡めながら、ギュッとまとめてみたいと思います。

大人の成長の4段階とは?

まず本書が言いたいことである、成人発達の4段階(以下、大人の成長と意訳します)の全体像を示しましょう。

本書によると、大人の成長は次の4段階で考えることができます。

  1. 道具主義的段階
  2. 他者依存段階
  3. 自己主導段階
  4. 自己変容・相互発達段階

それぞれ簡単に説明すると、次の図の通り。(シンプルにするため本当にざっくりです。詳細は本書をお読みください)

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つまり、大人の成長には段階があってレベル2〜レベル5までの4つがあるんだよ、ということです。(レベル2から始まるのは、レベル1は子どもの状態だから、ということです。大人になったら誰もがレベル2には最低限にいるということです)

このレベル分けは、直感的にもわかりやすいですよね。その人がどれくらい深い対話ができるのか、1つのモノサシとして使えると思います。

レベル2の人にはこんな対話を。レベル5の人にはこんな対話を。という感じで。

大人の成長とリフレクション

で、それぞれの段階の詳細はまた本書を読んでもらうとして、ここで気になるところはこの発達段階とリフレクションの絡みです。

結論から言うと、発達段階はリフレクションと非常に関連しています。というより、リフレクションをすることで発達段階がレベルアップしていきます。

これはクリス・アージリスのダブルループ学習を考えると、かなり納得することができます。

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ダブルループ学習ではある行動はある前提のもと行われていると考えます。

つまり、行動を変えるには、その裏にある前提に気づくこと、それを変化させることがポイントなんだよ、ということがダブルループ学習が主張する内容です。

ここで、最初にアップした発達段階の図を見て貰えたらと思いますが、発達段階がレベルアップするというのは、「それぞれの段階で持っている前提」がレベルアップする(変わる)ことだと思います。自分中心の前提から、他人中心の前提へ、そして自分と他人の双方を中心とする前提へと変わることが、発達段階のレベルアップなのです。(表では「焦点」という表現をしています)

つまり、発達段階のレベルが上がることは、このダブルループ学習が成功したときなんですね。「自分が持っている前提は何?」というリフレクションを意識して続けることで、あるとき自分の前提に気づくことができる。それが発達段階のレベルがアップしたということになるんですね。

リフレクション支援の方針としての「支援する問い」

少し話が難しくなってきました。

これまでの流れをまとめると、発達の4段階は「ダブルループ学習的なリフレクション支援」でレベルアップさせることができそうだ、ということでした。

ダブルループ学習的なリフレクション支援とはそれぞれの前提に対してアプローチする問いを投げることで実践することができます。

実は表に書いてある「支援する問い」というのがダブルループ学習的なリフレクションを支援する問いです。それぞれの段階に人に、例えば表のように質問してみると、その人のレベルアップを支援することができるでしょう

例えば、他者依存段階(レベル3)にいる人にとっての支援する問いは「なぜそう考えるの?」そして「あなたはどうしたいの?どう感じているの?」というものです。

この段階の人の典型的な反応は「なぜそう考えるの?」に対して「そうやれと言われたから」とか「世の中はそういうもんだ」という反応をします。そして「あなたはどうしたいの?どう感じているの」という問いに対しては、反応に困ることもあります。

レベル3の人に対しては、その辺りの問いでじっくり対話してみてください。ある時リフレクションが進み、ふと気づくはずです。「あ、自分は他人の価値観で物事を判断しているかも!自分の気持ちはあんまり考えてないかも!?」ということに。

今回は例として、レベル3の人に対するリフレクション支援について例示しましたが、他のレベルについても同じようなリフレクション支援ができると考えています。

ということで、大人の発達段階の話と、リフレクション支援に対する話でした。

皆様の周りにいる人の成長を支援するため、ぜひ発達段階を参考に投げる質問を変えてみてください。図の質問が参考になるはずです。(というより、本を読んで見るのが一番かもしれないですが)