リフレクションを支援する5つのポイント:ID第一原理と関連付けて

【メルマガアーカイブ+20160823】

先日、面白い本を見つけてしまいました。

それはこちら、インストラクショナルデザインの理論とモデルです。

インストラクショナルデザインは簡単に言えば教え方の技術のことであり、学校の先生などを中心に発展が進んでいる考え方です。

少し専門的な内容ですが、企業や日常文脈でも超役に立つ考え方なんですよね、これ。

今回の記事では次のことが伝わればいいなーと思っています。

  • インストラクショナルデザインっていう領域があるよ
  • その根本的原理として、第一原理ってのがあるよ
  • 第一原理は会社のOJTとか、育成場面で使えるよ

■インストラクショナルデザイン?

まず、インストラクショナルデザインって言葉、ご存知でしたでしょうか。

カタカナ並んで難しいんですけど、インストラクション(教えること)をデザインする、ということでインストラクショナルデザインっていう言葉が最近流行りです。

先生のための教える技術!というとイメージがつきやすいかなと思いますが、主に教師教育(学校の先生を育てる)文脈で発展してきた考え方です。

でも「教える」が必要な場面って学校だけじゃないですよね。企業でだって「教える」が効率化したら、良いこと沢山です。

ということで、最近は企業文脈でもインストラクショナルデザインが大事だー!って流れも出てきてて、研修屋さんなんかはこの勉強会に行ってるよという人も多いのではないでしょうか。

興味がある方はぜひインストラクショナルデザインで検索してみてください。Google先生で検索したらすばらしい資料がすぐにできます。

特に早稲田大学の向後先生のPDFは無料で読める資料としてはかなりお得ですので、ぜひゲットされてはいかがでしょうか。(グーグル先生の検索ですぐ出てきます)

■インストラクショナルデザインで、まず知っておけ!なことは?

そんなインストラクショナルデザイン。

まず知っておけの内容としてインストラクショナルデザインの第一原理があります。

「この原理を考えながら設計すると、よい教え方ができるよ!」というのがそれで、中身を一気に書いちゃうと、次の5つがインストラクショナルデザインの第一原理と呼ばれているものです。

  1. 例示の原理:学習は、学習者が例示されたものを観察したときに促進される。
  2. 応用の原理:学習は、学習者が新しい知識を応用する際に促進される。
  3. 課題中心の原理:学習は、学習者が課題中心の教授方略に取り組んだ際に促進される。
  4. 活性化の原理:学習は、学習者が事前に学んだ関連知識や経験を呼び起こすときに促進される。
  5. 統合の原理:学習は、学習者が新しく学んだ知識を日々の生活に統合する際に促進される。
    引用:インストラクショナルデザインの理論とモデル C・M・ライゲル−ス et al.

それぞれの詳しい説明は、上で紹介している本を読んでもらうとして、なんとなくなるほど!な内容ですね。

確かにこれが「教え方」の中に設計されていると、わかりやすい教え方になります。ちょっと簡単にそれぞれの要素を説明してみましょう。

まず、例示について。これは皆さん読んでわかると思いますが、何かの例を挙げて説明することですね。算数の計算なんかは、基本的に教科書に例がのっていますが、それが正に例示の原理を適用した例です。(といって、ここで皆さんに「算数の教科書の例」で伝えたことも例示ですね。)

応用もそのまま漢字の通りです。算数の例でいうなら、幾つかの基本的計算を例示して、その後、少しだけ状況の違う計算を実際にやってみることが対応します。(というのを、また例示で示しました(笑))

課題中心という言葉は少し耳慣れてないかもですが、最初は簡単な課題から始まって、非常に課題が難しくなっていくような流れのことです。算数の問題集とか、まさにそうです、最初は簡単な計算が並んでいますが、少しずつ難しくなっていきますよね。

活性化の原理も耳慣れないかもですが、これは意外に簡単です。引用の部分にも書いてますが、他の関連知識や経験などを思い出す(活性化する)ようなことです。例えば、仕事である経験をしたときに「あ、これ本で読んだあの知識のことだな」とわかるようなやつです。

最後、統合の原理はその気づきを日常文脈に活かすことです。リフレクションが正にこのSTEPのことで、省察して明日からの具体的仕事にどう活かそうか、と考えて自分の中に落とし込んでいることが、統合にあたります。

インストラクショナルデザインの理論とモデルの原本では、以上のことを次の図でまとめています。

id5

課題を中心に置きながら、まずは活性化→例示→応用→統合と進んでいくのですね。

ただ、ここで「ん?」と違和感を持った方もいるかと思います。

と言うのは、一般的に僕らは「例示」から始めることが多いですよね、実際の現場では。

そうなんです「活性化」という要素は思い出してみれば意外に取り入れていなことが多いんです。

このことは本でも言及されていて、今後は活性化をどう組み入れるかがポイントになりそうだね、と締めくくっています。

■5つの原理を「教える」に組み込んでみよう

ということで、例示、応用、課題中心、活性化、統合という5つの原理がインストラクショナルデザイン(教えることの設計)には大事ということでした。

考えてみれば当たり前のことですね、これ。

教え方の上手い人をみていると、この5つの原理を上手に取り入れていることがわかります。

思い出してみてください、皆様の周りの教え方の上手い人の教え方を。そして、自分が後輩とかに教えたときに、後輩が「なるほど!!」ってなったときの教え方を。

インストラクショナルデザインの5原理、せっかくの機会ですのでぜひ取り入れてみてください。

OJTなんかでは、この5つの原理を組み込むことを意識すれば、かなり良い関わり方ができると思いますし、僕はセミナーなんかにも取り入れています。

例示→応用→統合に対応する時間をセミナーに組み込むだけでも、参加者の満足度は大きくことを感じていますので、セミナーなどの設計にもぜひお役立て頂ければと。

以上、インストラクショナルデザインの理論とモデルから、インストラクショナルデザインの基本についてでした。